人付き合いをしていると
「この人とは、どうも考え方が合わないな」と感じることがある。
相手のことが嫌いなわけではない。
大きなトラブルがあったわけでもない。
それなのに、話をしていると、どこか噛み合わない。
そんな相手とは、どう付き合えばいいのだろう。
以前、子どもが学童野球をしていたころ
あるお母さんとの出来事を通して
私は人との距離の取り方について考えるようになった。
価値観が合わないと感じた、ある出来事
良かれと思ってしたことが、思いがけない反応に
子どもが小学生のころ、学童野球のチームに入っていた。
当時、母親たちには「お茶当番」という役割があった。
試合中の子どもの体調管理や
保護者への連絡
コーチへの飲み物の用意など
チームを支えるための大切な仕事だった。
チームには
子どもが卒業したあとも監督やコーチとして残ってくださるOBの方々がいた。
その中に、ミルクティーしか飲まない監督が一人いた。
以前からチームにいるお母さんたちは
その監督のことをよく知っていたので
特に問題にはなっていなかったらしい。
ところが、代が変わり
新しく入ってきたお母さんたちは事情が違った。
いつの間にか
「その監督にはミルクティーを用意しなければ」と思うようになり
お茶当番の日には
自腹でミルクティーを購入して持参するようになっていた。
私は、それを知って驚いた。
ボランティアでチームを支えてくれる監督への感謝はもちろんある。
でも、当番をするたびに
担当のお母さんが自分のお金で飲み物を用意するのは違うのではないか。
そこで、当時の6年生のお母さんに相談してみた。
すると
「それはあかんよね。今さらコーヒーを飲んでとは言いにくいだろうし
チームでミルクティーを買って倉庫に置いておけばいいんじゃない?」
という話になった。
代表にも相談し
チームの費用で用意することになった。
これで、当番のお母さんたちの負担もなくなる。
私は、よかったと思った。
「力を示したかった?」と言われて
ところが
そのことを下の学年のお母さんに伝えたとき
思いがけない言葉が返ってきた。
「〇〇だったら、変えられると思ったん? 力を示したかった?」
正直、何を言われているのか
すぐには理解できなかった。
そんなつもりではなかったのに。
「あぁ、そういうつもりじゃなかってんけどね……」
そう返して、その場を離れるしかなかった。
同じ出来事でも、受け取り方は人によって違う
私は、ただお母さんたちの負担を減らしたかった。
監督への感謝を否定したかったわけでも
自分の考えを押し通したかったわけでもない。
でも、相手には違う意味に受け取られた。
今振り返ると
私とそのお母さんでは
物事を考えるときの基準や
大切にしているものが違っていたのだと思う。
もちろん、相手が何を考えていたのか
本当のところはわからない。
ただ、同じ出来事を見ていても
立場や考え方が違えば
受け取り方も変わる。
自分にとっては当たり前のことでも
相手にとってはそうではない。
自分がよかれと思ってしたことが
相手には余計なことに見える場合だってある。
人付き合いは、なかなか難しい。
価値観が合わない人とは、無理に距離を縮めなくていい
その出来事のあと
私はそのお母さんと必要以上に関わらないようになった。
会えば挨拶もするし
その場にいれば簡単な雑談もする。
でも
以前なら話していたような
子どもたちのちょっとした近況や、個人的な話はしなくなった。
嫌いになったわけではない。
ただ、私と彼女では軸が違うのだろうと思った。
だから、無理に距離を縮める必要もない。
お互いに気持ちよく過ごせるくらいの距離でいればいい。
そう考えるようになった。
嫌いではないけれど、思いがけないLINE
それから何年もたち、上の子が高校生になったころ
全国大会に出場することになった。
すると、あのときの彼女から、お祝いのLINEが届いた。
本当に驚いた。
個人的に仲良くしていたお母さんたちから連絡をもらうことはあったけれど
まさか彼女からもらえるとは思っていなかった。
そのとき、ふと思った。
ああ、私のことが嫌いだったわけではないんだな。
私も、彼女のことが嫌いなわけではない。
ただ
仲良くするための価値観や、物事の捉え方が違う。
それだけなのかもしれない。
仲良くはできないかもしれない。でも、嫌う理由もない。
そう思えた。
合わない人と、無理に仲良くしなくてもいい
人間関係というと
仲良くするか
距離を置くか
どちらかのように考えてしまうことがある。
でも
実際にはその間にも
いろいろな関係がある。
親友にならなくてもいい。
深い話をしなくてもいい。
必要なときに挨拶をして、普通に会話ができれば
それで十分な相手もいる。
価値観が合わないからといって
相手を否定する必要はない。
そして
自分の考え方を相手に理解してもらおうと
頑張り続ける必要もない。
人それぞれ、大切にしているものは違う。
その違いを無理に埋めようとするのではなく
違うものとして受け止める。
仲良くなれない人がいてもいい。
少し距離を置く人がいてもいい。
嫌いではないけれど、深くは関わらない。
そんな関係があってもいいのだと思う。

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