〜小学校3年生の小さな世界で起きた、大きなすれ違い〜
何年も前、法律事務員として働いていた頃の話だ。
相談に来た若い夫婦は、やつれた顔をしていた。
彼らの娘、サキちゃん。
地元の小学校に通う3年生だ。
活発で、昼休みになると
仲良しの友達と校庭でドッジボールをする。
笑顔がかわいい、普通の女の子だった。
しかし、夏休みが明けて2学期が始まった頃。
サキちゃんの笑顔は消えた。
突然、笑わなくなった娘
学校から帰ってきても笑顔がない。
夕食もそこそこで部屋にこもる日が続いた。
10日ほど経ったある朝
サキちゃんは小さな声でつぶやいた。
「学校へ行きたくない…」
両親は、もし娘がそう言ったら
一度は受け入れようと話し合っていた。
その日は学校を休ませ、お母さんとゆっくり過ごすことにした。
本を読んだり、お昼ご飯を作ったりしていると安心したのか
サキちゃんはポツリ、ポツリと話し始めた。
仲良し4人組の“違和感”
夏休みが明けて学校へ行くと
いつもの仲良し4人組の雰囲気が少し違っていたという。
グループの中で一番活発でリーダー格の女の子。
その子からの「イヤなこと」が増えていった。
- トイレに行くとき、サキちゃんだけ誘われない
- ドッジボールも誘われない
- 授業中の4人グループ作りでも外される
- LINEグループは沈黙し、サキちゃんの「わたし、何かした?」だけが残る
ただ、リーダー格以外の2人は
個別ではサキちゃんと仲良くしてくれていた。
相談すると、こう言われた。
「わたしらもよく分からへんねん。でも何か強いから引っ張られるっていうか…」
自分の言葉で伝えさせるという選択
2時間ほどかけて事情を聞き出した両親は悩んだ。
- 親が担任に相談すべきか
- 子ども自身の言葉で「嫌だ」と伝えさせるべきか
話し合いの末
まずはサキちゃん自身に伝えさせることにした。
翌日の5分休憩。 いつもの“サキちゃん外し”が始まった。
「○○ちゃん、○○ちゃん、一緒にトイレいこ〜!」
そこでサキちゃんは反撃に出た。
「○○ちゃん、○○ちゃん、隣のクラスに用事があるから一緒に来て!」
その後も休み時間ごとに2人を誘い
3人で過ごした。
2人もリーダー格の子に嫌気がさしていたため
サキちゃんに声をかけられると一緒に動いた。
サキちゃんは再び笑顔で帰ってくるようになった。
両親もほっとした。
ところが、学校からの一本の電話
ある日、学校から電話が入った。
「リーダー格のお友達が、サキちゃんにいじめられていると訴えています」
サキちゃんが学校へ行きたくないと言っている、と。
話し合いの場を持ちたいので来てほしい、と。
学校へ行くと
リーダー格の子とそのお母さん、担任、副担任、校長先生が揃っていた。
「いじめられたのはうちの子だ!」という主張
お友達のお母さんは怒りを抑えられなかった。
- 娘は仲間外れにされて辛い思いをした
- ご飯も喉を通らない
- 学校へ行きたくないと言っている
- カウンセラーにも通わせている
- 診断書もある
そして最後に
3年生のサキちゃんに向かって指をさし、怒鳴りつけた。
「いじめっ子のあんたが学校へ来るから、うちの子が休むんや!来るな!」
サキちゃんの両親も黙っていられなかった。
「そもそも全く同じことをあなたの娘さんが先にやり始めたのです」
しかし、責めるだけでは意味がない。
両親は続けた。
「まだ精神的にも幼い子どもたちです。
これを機に、何をしたら嫌な思いをするのか
お友達を傷つけることになるのかを
みんなで学びませんか」
サキちゃんの目は真っ赤だった。
涙をこらえていた。
お友達も同じだった。
学校側も、
「クラスでも話し合いをします。注意深く見守ります」と約束してくれた。
やっと終わった——そう思った。
ところが数日後、裁判所から呼出状が届いた
リーダー格のお友達のお母さんは納得できなかった。
- 娘はいじめられた
- 学校も守ってくれなかった
- 許すべきではない
そう主張し
サキちゃんと、監督責任として両親を訴えたのだ。
その結果・・・
2人とも学校へ行くことなく、小学校の卒業式を迎えた。
校長先生が新一年生に伝えた言葉
大学生になった息子の小学校入学式の日。
校長先生がピカピカの一年生に話した言葉を
私は今でも覚えている。
「お友達とケンカしたり
嫌なことをしたときは
『ごめんなさい』と謝ってほしいのです。
謝ることを知らずに大人になると
ずっと謝れない人になってしまいます。
人間はたくさん失敗します。
だから、まだ心がふわふわな小さなうちに
謝ることを覚えてください。」
本当の被害者は誰だったのか
あの日の話し合いで
子どもたちも、親たちも
素直に「ごめんなさい」と伝え合い
お互いを受け入れることができていれば・・・
彼女たちの大切な小学校生活は
もっと充実したものになったのではないだろうか。
そう思うと、胸の奥がぎゅっと痛くなる。
本当の被害者は、一体誰だったのか。
心が疲れたときは「余裕」を取り戻すことが大切
子どもの世界のすれ違いも
大人の世界の衝突も
心の余裕がなくなると一気に視野が狭くなる。
最近、私自身も安眠できない日が続いていて
気持ちが沈むと、 「助けて」と言う気力すらなくなることを痛感している。
そんなとき、 耳だけが自由になる Audible(オーディブル) をよく使う。
- 何もしたくない夜
- 気持ちが沈む日
- ただ呼吸するだけで精一杯の日
耳から物語や自然音が流れてくると
心がほんの少しだけ前へ進む。
余裕が戻ると、人はやさしくなれる。
そして、誰かの気持ちにも気づけるようになる。
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